週末観劇:7/15-7/16

この三連休、二日間はお芝居を観に行きました。

 

7/15(土):『他重人格 WHO AM I?』

7/16(日):SPIRAL MOON『おんわたし』

      :シアターノーチラス『孤独の観察』

 

 

 

4-6月期のドラマで『リバース』が一番面白くて

他人と自分との関わり、ということについて考えた。

そんな時に、アンテナに引っ掛かって取ったチケット。

でも、その時の気持ちと、観る時の精神の間には

距離が出来ているんです(笑)

 

 

 

 

 

『他重人格』は、程度の差はあれど

自分にも、いや、誰にでも当てはまる部分はあるんじゃないか

と思います。

 

 

 

他重人格

 

 

 

【キャスト】

大久保聡美

山崎彬(悪い芝居)

貴瀬雄二

小林瑞紀

野崎数馬(丸福ボンバーズ)

多田直人(キャラメルボックス)

村井まどか(青年団)

 

 

 

 

 

自分のことよりも、

自分の周りにいる人が喜ぶことをしたいと考える主人公。

結婚も、自分がしたいというより、彼女がしたいから

「じゃぁ、しようか」と言ってしまい

悪く言えば主体性が無い。

 

 

 

妻の実家(旅館経営)のあとを継ぐことになり

仕事を辞めることに何の迷いもない。

数少ない宿泊客に喜んでもらうため

客のSNSを見つけて情報収集し

好みに合わせたもてなしをする。

 

 

 

そうやって、町の電気屋、旅館に住み込みで働くアルバイト、

それぞれが望む人物になりきる主人公。

でもある時、住み込みのアルバイトである女性が

主人公に殴られて大怪我をするという事件が起こり

警察の事情聴取が始まると

各々が、主人公に対して異なる人物像を抱いている事が判明するのだが。。。

 

 

 

【感 想】

ラストが、今までに見たことがない展開で。

舞台の上に、

「ここから先は脚本は無い。

俳優たちは、自由にこの作品のテーマを話し合う。

ただし、『脚本が無い』ことを演じないように」

というような字幕が表示されました。

 

 

 

俳優さんたちは、フリートークを始めるのですが

「脚本が無いということを演じないように話し合う」ことに

普段の生活にあるような自然体を出すのは難しく、

どこか “ 演じている感 ” を嗅ぎ取ってしまったのでした。

 

 

 

自分の友達の前で見せる顔は、きっとそれぞれ違うであろう

ということを自覚している私に

今回の作品はとても面白く

主人公の、相手に合わせる度合いは

極端じゃないかと感じる部分もあったけれど

それをうまく演じていて、イヤミが無く、楽しめました。

 

 

 

 

 

おんわたし

 

 

 

『おんわたし』は

本多劇場グループのHPを見ていて

(面白そうだな)と思って、チケットを取りました。

 

 

 

おんわたし

 

 

 

人から受けた恩を

その人ではなく、別の人に渡すこと。

そんな風習がある、沖縄のとある島での物語。

 

 

 

【キャスト】

金城 吾郎  ・・・ 保倉 大朔(uncle jam)

知念 良夫  ・・・ 河嶋 政規(Propeller☆Circus)

喜屋武 珠代 ・・・ 早川 紗代(ノアノオモチャバコ)

玉城 庄吉  ・・・ 牧野 達哉

玉城 伸子  ・・・ 土井 すみれ

西 保    ・・・ 榎本 悟(シアターキューブリック)

中村 節子  ・・・ 浅野 美由希

平良 謙吉  ・・・ 関根 芳雄(MAHALOエンターテイメント)
戸田 政男  ・・・ 大澤 俊
新垣 マリコ ・・・ 長谷川 なつみ
松原 君子  ・・・ 秋葉 舞滝子

 

 

 

島にある小さな郵便局で働く良夫のところに

浜辺に打ち上げられた、コーラの瓶が届く。

中には、10年前の手紙が入っていた。

中学受験を控えた小学生の女の子からで

算数の問題が書いてあり「答えを教えてほしい」と。

大人たちは、一生懸命その問題を解き

今は22歳くらいになっているであろうその少女宛に

算数の答えと共に、コーラの瓶がこの島に流れ着いたことを書いた返信を

手紙に書かれていた住所へ、送る。

 

 

 

良夫のところに、町の観光課から「この子を預かってほしい」と

保という二十歳ぐらいの青年が、節子に連れられてやって来た。

保はどうやら、人の命を奪ってしまった事情があるようで…

郵便物の配達を真面目にこなすが、無口でからみづらく

掴みどころの無い保に

良夫や珠代は完全には心を開けないでいる。

 

 

 

すると、手紙を出してから数日後

郵便局に、女性(松原 君子)が尋ねてくる。

名乗りもせずに一度は郵便局を後にする君子を

保の実の母ではないかと思う良夫。

だが、君子は、コーラ瓶の手紙の差出人である少女の母親だった。

 

 

 

「私はあの後、中学受験に成功し

今は社会人として、仙台で働いています。

10年前の手紙に返事をくださって、ありがとうございました」

そう返事が来たけれど、本当は少女は中学受験に失敗し

その事を苦に、自ら命を絶ってしまっていた。

返事を書いたのは母親(君子)で

「島の人たちに嘘をついたことを詫び

10年前の娘の手紙に返事をくれたことにお礼を言いたい」

と、この島に足を運んだのだった。

 

 

 

「あなたが、そういう気持ちでこの島に来てくれたのであれば」

と良夫は、この島に伝わる “ 恩渡し ” の風習について話し

保の立ち直りに手を貸してほしいと、君子に頼むのだった。

 

 

 

【感 想】

セットは、郵便局内のみ。

とは言え、こちらの郵便局を想像すると、それとは異なり

良夫の家でもあるので、どこか生活感もある。

扇風機が回っていて、真ん中には6人掛けくらいのテーブルがあり

入口には、畑で取れた野菜が売っていたりする。

このセットが、よく出来ていてとても素晴らしかった。

 

 

 

タバコを吸うシーンがあったり

(事前に、タバコのにおいが苦手な人には

マスクを配るという配慮がありました)

線香花火のシーンもあったり、と

小劇場ならではの、生々しさが感じられる面白い作品でした。

 

 

 

自分が人からしてもらった嬉しさを、他人に「渡す」。

日常生活で忘れていた、大切なことを思い出させてくれたような

温かい気持ちになれた作品でした。

 

 

 

 

 

 

孤独の観察

 

 

 

孤独の観察

 

 

『孤独の観察』も

本多劇場グループのHPで、何か心に引っ掛かって

チケットを取りました。

 

 

 

入場時に、チラシやアンケートが手渡されますが

その中に入っていた、作・今村幸市さんが書いていた

作品に対する想いが、静かに心に響いてきました。

この作品は、2008年に起きた、秋葉原での無差別殺人事件から感じたことを

今村さんが書き上げた作品だそうです。

 

 

 

【キャスト】

前崎 千絵(かつての同級生)・・・ 福田 桂子(スターダスト・21カンパニー)

片山 セリ(かつての同級生)・・・ 木村 香織(theaternautilus)

宮村 亜希(かつての同級生)・・・ 佐藤 彩乃

瀬戸 涼子(かつての同級生)・・・ 相良 康代(劇団 milquetoast+)

奥田 雅也(かつての同級生)・・・ 山崎 拓也

瀬戸 慎二(涼子の夫)   ・・・ 高島 桂介(41 Promotion)

飯島 成美(比奈の姉)   ・・・ 御子神 陽子

飯島 比奈(かつての同級生)・・・ 萩原 愛子

 

 

 

【あらすじ】

高校の同級生である千絵、セリ、涼子は

宮村 亜希と奥田 雅也の結婚式に出席するため

披露宴会場に集まっていた。

ただし、披露宴が始まるまではまだだいぶ、時間がある。

なぜこんなに早く集まったかと言うと

亜希を含めた4人には、確認しておきたい12年前の出来事があった。

 

 

 

高校3年生だった、あの夏。

4人(千絵、セリ、涼子、亜希)と、同級生の比奈は

いつも5人で一緒に遊んでいた。

だが比奈は、どこか人付き合いがヘタで

ノリもイマイチだ。

そのことにイラつく千絵は

付き合いに参加するように強い口調で言い放つことが

しばしば有った。

 

 

 

比奈は、ネットでとある人物と知り合った。

ネット上では、見た目を気にする必要も無いし

自分の心をさらけ出すことが出来た。

比奈は、現実の世界よりも、ネット上の友達に心を開いていた。

それを心配する、比奈の姉・成美。

 

 

 

そんなある日、ネットの友達が、事件を起こすと言う。

それを止めようと、会う約束を取り付ける比奈。

比奈は、亜希の誕生日祝いをカラオケでしようという

誘いを断り、一人で待ち合わせ場所へ向かおうとする。

「亜希の誕生日を祝うよりも大切なことがあるの?

だったらそっちに行けばいいじゃない!」と責める千絵。

比奈はカラオケには行かず、待ち合わせ場所へ。

4人は、カラオケへ向かう。

すると、繁華街で無差別殺人事件が起こったというニュースが流れてきた。

犠牲者の中に、比奈がいるのではないかと心配する4人。

だが、事件とは別の場所で、殺された比奈が発見された。

 

 

 

そのことをずっと抱えたまま

高校卒業以来、12年ぶりに会う4人。

自分たちに非はなかったのだと、確かめ合う。

そこに、なぜか比奈の姉である成美が現れて…。

 

 

 

成美は、無差別殺人事件と同時期に起きたせいで

きちんと捜査されなかった妹の死について

真犯人を探そうと、一人で調べ始める。

そして、高校の同級生たちのことを、

事件後からずっと観察していたのだった。

 

 

 

高校時代、比奈に想いを寄せていた奥田。

あの日、「事件を起こす」と言うネットの友達を説得しようと

待ち合わせ場所で不安に押しつぶされそうになりながら

携帯を握り締めて待つ比奈の前に、偶然奥田が現れた。

自分の想いを抑えきれず、比奈を責めるようにまくし立てるうち

奥田は誤って比奈を壁に強くぶつけ、彼女を死なせてしまう。

その場を立ち去る奥田。

 

 

 

帰宅しない比奈を心配した姉の成美は

比奈が死んでいた場所の近くで、

逃げるようにして去る奥田の姿を見かけ

その後、10年以上に渡り、彼らを観察し続けた。

「3年前に偶然再会したことがきっかけで付き合い始め

亜希さんと結婚することになったみたいだけど

それが本当に偶然なのか、教えてあげましょうか?」

と言う成美は、とても怖かった。

 

 

 

比奈を死なせてしまった後悔と罪の意識から

その後、人と関わらないように生きてきた奥田の孤独。

それを観察しながら、12年も比奈のことを思い続けた成美もまた

孤独だったのだと。

千絵、セリ、涼子、亜希もまた

卒業後に連絡を取り合わなくなるくらい

罪の意識を感じていたということ。

(※結局は、比奈を死なせたのは奥田だったけれど

比奈を一人にしなければ死ななかったかも知れない

という後ろめたさを、彼女たちも12年間抱えていた)

 

 

 

千絵が、付き合いが悪い比奈を責めるシーンでは

「大丈夫だから。そんなに責めないで」と

彼女の腕をつかんで言ってしまいたくなる切なさが

こみ上げてきました。

目の前にある関係を大切にすることは

もちろん大事だけれど

そうやって大事にしていこうとしても

望んでいないのにこの先、壊れてしまうこともある。

大人になれば、社会に出れば

新しい人との関係性が始まることもある。

今、目の前にあるものにしがみついて、傷つけないで。

「大丈夫だから。傷つけないで!比奈を。あなたを」

と、言いたかった。

 

 

 

 

 

この記事、観てから一ヶ月ほどして書いているのですが

『孤独の観察』は一週間くらい、

何度も思い出しては、苦しくなりました。

 

 

 

俳優さんたちも、とても良くて。

特に、比奈役を演じた萩原愛子さん。

普段はおどおどして、自分の意見を同級生にうまく言えない比奈が

ネット上の友達に思いを伝える(書き込む)シーンでは

必死で説得しようとする優しさが伝わってくる演技が見事でした。

彼女の、他の舞台も観てみたい。

 

 

 

 

 

この2日間で観た3本は

どれも「人との関わり」がテーマになっていて

過去の経験や、これからの自分の行動について

考えるきっかけを貰えた作品ばかりでした。

 

 

 

| 観劇・美術・映画 | 22:25 | comments(0) | - | pookmark |
観劇:チェルフィッチュ『部屋に流れる時間の旅』

今月は、初めての劇団のお芝居を沢山観ました。

ラストは、チェルフィッチュ。

これも、とあるメルマガがきっかけで気になったのですが、すでに完売。

追加公演が発売されると知り、チケットを取りました。

 

 

 

 


とある部屋に、一組の男女(夫婦)がいる。

夫は、観客に背を向けるように椅子に座り

なぜか足を、床に着かないようぎりぎりのところで浮かせている。

舞台は2012年。

前年に、あの大震災があってから

妻は心に起こった変化を、出来事を振り返りながら夫に言い聞かせる。

「ねぇ、憶えてる?」と。

 

 

 

それまでは、アパートから赤ん坊の泣き声が聞こえてくるだけで苛立っていたのが

あの震災をきっかけに、苛立たなくなった。

地震が起きた後、アパートの住人と近くの駐車場に集まったとき

それまで挨拶も交わさなかった住人たちに対して、関心を持ち始めたこと。

 

 

 

その部屋に、一人の女性が訪ねてくる。

女性は、交通渋滞に巻き込まれ、部屋に着く時間が遅れてしまう。

携帯の充電は切れ、訪問が遅れることを連絡できない。

妻はあの日からの記憶を話し続け、夫は時々相槌を打ったり

「そうだったっけ?」と返事をするのだが。

 

 

 

実は、震災から4日後、妻は持病の喘息で死んでしまった。

部屋に残る妻の亡霊。

亡霊と会話をする夫。

部屋を訪ねて来ようとしている女性は、妻の死後、夫が恋心を抱くようになった女性であり

女性もまた、男性に対して淡い気持ちを抱いている。

 

 

 

震災によって心に湧いた様々な感情を「かき混ぜられた」と言ったり

震災によって「(他者への)無関心が死んだ」と言う台詞は

とても独特で心に残りました。

が…妻が延々と繰り返す「ねぇ、憶えてる?」に

私の心がかき混ぜられてしまい…途中から(いつ終わるかな)と感じてしまいました。

 

 

 

チェルフィッチュ_『部屋に流れる時間の旅』

 

 

 

作・演出の岡田さんが上に書いている通り

震災を経て、新しい変化を実現させるための突破口に立った妻は

心の中に湧き上がった未来への希望を言葉にして夫に聞かせるけれど

妻を失い、別の女性に好意を持ち始めた夫とは、温度差があって…

というところまでしか、感じることが出来ませんでした。

 

 

 

演出なのだろうけれど、舞台上で放たれる光や風に、集中力がそがれたし

伝えたいことを抽象的な台詞に込めて

観客自身の読み取る力に大部分を委ねているように感じた今作に対して

疲労感と後味の悪さが残りました。

 

 

 

作品から何を感じるかは観客の自由で

「おもしろい」「つまらない」「かなしい」「たのしい」など

様々な感想が湧いてきますが

楽しい作品だけが良かった訳ではなく

イキウメ『天の敵』や、ワンツーワークス『アジアン・エイリアン』のように

重いテーマを扱った作品でも、

観終わった後もずっと、そのテーマを自分の人生や生活のそばに置いて

一緒に生きていく作品もある。

 

 

 

観る時の、自分の肉体的・精神的なコンディションもあるだろうし

年齢的に、好みが変わってくることもあるだろうから

“相性” という二文字で片付けることはあまりしたくないけれど

それでもやっぱりあるんだろうなぁ、相性が。

なんてことを感じた観劇でした。

 

 

 

チェルフィッチュ_『部屋に流れる時間の旅』

 

 

 

| 観劇・美術・映画 | 23:48 | comments(0) | - | pookmark |
観劇:ワンツーワークス『アジアン・エイリアン』

今日は赤坂レッドシアターにて

ワンツーワークスの『アジアン・エイリアン』を観劇。

初めて観る劇団で

とあるメルマガがきっかけでチケットをとりました。

 

 

 

 

 

舞台には、高さが20cmほどの、木枠で作ったプール型のようなものが置かれてあり

そこには真っ黒なシートが敷かれています。

舞台下手には、ドアがあり、そこは霊安室という設定でした。

プール型より少し高いところに、鉄の柵があり

柵の向こうにもまたドアが。

 

 

 

オープニングから(これは何を表しているの?)と感じるような動きで

12人の、喪服を着た男女の俳優さん達が、

這い上がるようにして鉄柵を越えて、プールの方へやってきます。

雨期の水田を歩く時のように重い足を引き抜き引きずりながら

一歩ずつ歩を進める男女。

その中で一人の女性が、持っていた木箱から

中に水が入っているガラスの器を取り出します。

一人ずつ、喪服のポケットから布を取り出して

その布を開くと、真ん中に赤い丸が描かれた白い紙があり

その紙を、ガラスの器の中に入れていくと

紙は溶け、器の水がどんどん赤くなっていく。

 

 

 

場面は変わり、一人の男性・サカイダが

霊安室の前で、白いハンカチで口を押さえて座っている。

と、彼の会社の後輩である男性がやってくる。

サカイダは「ミサキもミチコも、嘘みたいに綺麗な顔をしてる」と言い

顔を見てくるよう促しますが

後輩は霊安室に入る前に、「“礼節”だから」と言って

喪服に着替え始めます(多分ここは、

もっと観客の笑いがとれると思っていたであろう劇団側の思惑に反して

会場には微妙な空気が流れていました)。

と、そこへ買い物かごを持った女性が現れます。

「ミサキの姉」と名乗るその女性は霊安室に入り

出てくると「あれは弟じゃない」と衝撃の発言をします。

 

 

 

もうこの出だしから(やられた!)と感じましたが

私は、ミサキもミチコも女性で、サカイダの妻と娘かな?と勝手に思っていたのだけれど

ミサキ:男、ミチコ:サカイダの姪で、二人は婚約者という設定でした。

ミチコは、サカイダの実弟の娘で、ミチコが中学生の時に死んでしまった父(実弟)に代わり

サカイダが実の娘のように育ててきたのでした。

交通事故で死んだミサキ(下の名前はヨシヒコとかクニヒコと言った役名でした)は

天涯孤独と聞いていたのに、姉と名乗る女性が出てきたことが始まりで

「あれはミサキじゃないのか?本当は、誰なんだ?」

と不審に思ったサカイダが真相を突き止めていくお話でした。

 

 

 

結論から言うと、ミサキと名乗る男性は実は在日で

ミチコと結婚したいために、日本国籍を手に入れたくて

本物のミサキ(買い物かごを持った女性の弟)から、戸籍を買ったというのが事実でした。

本物のミサキは男性に

「死んだ彼は、自分が在日だと知ったら

あなた(サカイダ)はミチコとの結婚を許してくれないだろうから

日本国籍が欲しいと言っていた」と話します。

サカイダは「そんなの関係なく、俺はミサキを認めていた」と言いますが。。。

自分が在日だと知ると「そんなの関係ないよ」と言う人は

本当の自分を見てはくれない。

違いを違いとして認めたところから理解を含めた関係が始まるんだ

というような台詞にはハッとさせられました。

 

 

 

 

 

この作品は、17年ぶりの再演だそうです。

観に行こうと思ったきっかけは「1トンの本水(※ホンミズ:本物の水)を使用」

という紹介文でした。

実は、公演後に、バックステージ・ツアー「水を使う」と題したアフターイベントがあったので

24日のチケットを取りました。

1トンという水が、どれくらいの量なのか普段の生活からは見当もつきませんが

黒いシートを敷いた木枠が、私の目測で2m×3.5〜4mほど。

そこに3cmくらい水を入れると、1トンなんだそうです!

でも実際はもう少し水を入れていたそうで、1.8トンくらいだとのことでした。

 

 

 

マイク 器の赤い水が、男性が手を入れてかき混ぜると白っぽくなったのはどうやったの?

  →漂白剤やクリーナーの類の液体をスポイトのような容器に入れ

   客席から見えないように手のひらに隠し持ち、それを器の中で出した。

マイク 劇中でびしょぬれになるけれど、洋服の替えはあるの?

  →洋服の替えは無いので、公演後に乾燥機で乾かしている。

   なので、2公演ある時は生乾きのまま着て演技しているそうですよ!

マイク 靴も?

  →靴も、洋服と同じように乾かしている。

マイク 木枠の中に、最初は透明な水が流れてきたけれど

  徐々に白っぽい水が流れてきたのは、あれは何?

  →入浴剤を溶かして作った白い水を流していた。

 

 

 

などなど。

観客からの質問に、サカイダを演じた奥村洋治さんが答える形で

イベントは進んで行きました。

(この質問タイムで「オープニングのところが、田植え作業みたいだった」

とおっしゃったお客さんが居て

私も同じことを思ったので、心の中でニヤリとしてしまった)

そうそう、排水作業は1時間くらいかかるそうで

奥村さんが話している間も、スタッフさんがポンプで水をくみ上げたり

モップやちりとりを使って水を出していました。

ちなみに、白い水は毎回捨てているとのこと。

バックステージ・ツアーでは、先ほどまで役者さんが立っていた舞台や

霊安室(そこは、流すための水を入れる500リットルのタンクが2つ置かれていました)

を覗かせてもらったりと、贅沢な時間でした。

 

 

 

オープニングで、喪服を着た男女が

水が入った器に入れる、真ん中に赤い丸が描かれた白い紙。

それは日の丸を表していて、

紙を包んでいた布が、すべて異なる鮮やかな色だったことは

その人たちの本当の国籍が多様であることを表しているのかな?と思ったり。

サカイダが白いハンカチで口を押さえ

「何か感じないか?」と臭気を訴えるシーンは

在日に対する嫌悪感の表れを意味していたり。

木枠に流れ込んできた白い水に、映像を投影する部分があったり。

ある時から、俳優さんが歩くとビチャビチャと水がはねて

霊安室の方から水が流れてきていることを知ったり。

水=人の無意識の中にある意識(この場合は、国籍で人を差別する意識かな)

という象徴であったり。

 

 

 

一度だけでは理解しきれない部分があったので

もう一度観に行きたい。

でも、DVDを買おうか…と本気で悩み中。

「重くて深かった」という薄っぺらな感想では片付けられないような作品でした。

観に行ってよかった。

 

 

 

| 観劇・美術・映画 | 21:52 | comments(0) | - | pookmark |
週末観劇:6/17-6/18

この週末は、3本のお芝居を。

 

6/17(土):パラドックス定数『九回裏、二死満塁。』

6/18(日):FUKAIPRODUCE羽衣『愛死に』

      :カムカムミニキーナ『狼狽』

 

 

 

すべて初めて観る劇団でした。

パラドックス定数は、タイミング的に

TBSドラマ『リバース』に似てる感じがしました。

 

 

 

高校時代の野球部のメンバーが、監督の納骨で集まる。

寺へ向かう前に、高校のグラウンドへ向かったメンバー。

そこで、キャプテンでもありキャッチャーでもあったミハラは

21年前に死んだ、ピッチャーのサワタリの亡霊を見る。

過去一度だけ、甲子園出場を果たした彼らだったが

サワタリは死ぬ前、それが監督の八百長によって成し遂げた出場だったことを

ミハラに打ち明ける。

サワタリの葬式の時、ミハラは監督に事の真相を確かめる。

監督は「お前、サワタリと俺、どっちを信じるんだ」とだけ言い

真実を教えてくれることのないまま時は過ぎ、この世を去った。

甲子園出場という、皆の青春の思い出を汚して死んだサワタリは

自殺だったのか?事故だったのか?

21年間、何も知らなかったショートのセンカワ。

ミハラと共に、秘密を守り続けていた四番のヤシオ。

地元にずっと残り、実家(寺)と野球しか知らないホヅミ。

監督は、なぜ八百長に手を出したのか。

結局、監督が八百長をした理由は

彼らが入部してきた時に、キャプテンが「みんなで甲子園に行きたい」

と発言した一言がきっかけだったという展開なのですが。

 

 

 

あることがきっかけで

その後何年も苦しみを抱くことになる。

現在と過去が入り乱れ、真相が解明していくストーリーは

ドラマ『リバース』や、最近観たイキウメ『天の敵』とも似ている印象があり

初めて観たこの作品だけで

劇団に対する印象や感想を決めてしまうつもりはありませんが

特段印象に残らない作品だったな、というのが正直な感想です。

 

 

 

 

 

日曜日は、FUKAIPRODUCE羽衣を。

この劇団が大好きだという友人から

事前に「好き嫌いがまっぷたつに分かれる」と言われていて

先入観なしに観よう!と意気込んで劇場に行きました。

 

 

 

『愛死に』は、7年ぶりの再演だそう。

ことばと歌、うごきで表現する作品でした。

下ネタ、と言ってしまえば分かりやすいけれど

それで片付けてしまうのは、あまりに大雑把。

夜の静まり返った劇場に現われた、6組の男女の亡霊たち。

相手への想いを、性への欲望を、赤裸々な言葉で伝えます。

これに拒否反応が出る人は居るだろうけれど

亡霊たちがもう現実では叶えられない愛に対する想いを、

素直に、まっすぐに伝えていて

生きていると、どうしても照れたり、格好つけたりして

本心から遠ざかってしまう。

私は生きているから、亡霊たちのまっすぐな欲望を

ちょっと恥ずかしいような、羨ましいような気持ちで見てた。

 

 

 

この作品を観た某有名人が

「いまのAVに欠けているものがある」と発言したそうで

それはきっと、叙情的ということなんだろうな、と思った。

そして、とても繊細に、緻密に出来ている作品だった。

基礎がしっかりしていると、動きと言葉にギャップが生まれて

生み出される笑いはより大きくなるのだな、と思ったり。

 

 

 

 

 

カムカムミニキーナ。

左前の人はずっと寝てるし、右隣の人はよく笑う(あ、右隣の人もちょっと寝てた)。

人の好みは多種多様で面白いな〜、と思いながら観てました。

私個人の感想ですが、作品としては冗長な印象を受けました。

「その歌、いる?」「その台詞、いる?」「その役、必要?」

と感じることが多く

話の枝葉があちこちに飛ぶので、集中力を削がれてしまう。

あれが劇団の作風ならば、よく笑っていた観客はファンなのだろうし

あのダラダラした(と私には感じられた)やり方が好みなのだろうなぁ。

もっとピリッと、ミステリーの要素で締めてくれたら

また違った感想をもったかも知れないけれど…。

姜暢雄さんが出演されていたことが、唯一の救いでした。

 

 

 

 

 

友人からは「一日に2本も観るの?!」と言われましたが

日曜日は同じ劇場(池袋の東京芸術劇場)だったし

チケットをとるのは土日、と限られている中で

公演スケジュールが近いと、仕方なかったりします。

実は来月も2回、一日に2本観劇します。

 

 

 

| 観劇・美術・映画 | 22:49 | comments(0) | - | pookmark |
歌舞伎って、おもしろい!(歌舞伎鑑賞教室:『毛抜』)

本日は国立劇場で歌舞伎鑑賞。

『第91回歌舞伎鑑賞教室』と題した

 

歌舞伎 解説 歌舞伎のみかた

歌舞伎 歌舞伎十八番の内 毛抜 一幕

 

でした。

まずは「歌舞伎のみかた」として

中村隼人さんが、歌舞伎にまつわるあれこれを30分ほど説明。

 

えんぴつ 定式幕(黒、萌黄、柿色 (※歌舞伎揚げの色です)

えんぴつ 舞台の上手(かみて)、下手(しもて)とは

えんぴつ 柝(き)について (※舞台上手で、拍子木で床を打つこと)

えんぴつ 女形を演じるときのコツについて

えんぴつ 毛振り(けぶり) (※長い髪の毛のかつらを振り回す・実演つき!)

えんぴつ 黒子の説明から、歌舞伎では演技を補助する「黒いものを見えてないことにする」

えんぴつ 花道について

 

など。

毛振りですが、あの毛髪の重さって4〜5kgあるんですって!

色は赤、黒、白があり

白いものは、チベットに生息する牛科のヤクという動物の毛を使って

作っていたらしいのですが

絶滅危惧種に指定されたため

現在は新たに作ることができないので

過去に作られた、今あるものを大事に使っていることが

説明されました。

実演の後、息を切らしながら説明する中村隼人さん。

歌舞伎では毛振りの後、台詞を言うことは無いそうなので(笑)

大変だったと思います。

それと、この解説中に、写真を撮ってもいいコーナーがあります。

2分ほどなのですが、これを撮ってSNSで拡散してほしいとのこと。

ハッシュタグは「#歌舞伎みたよ」です。

 

 

 

解説のあと、20分の休憩をはさんで

『毛抜(けぬき)』の上演がありました。

今回、入場時に薄いプログラムが配られており

あらすじ、みどころ、出演者が書かれていたので

休憩中に読んで予習(※あらすじは→ )。

 

 

 

今回の演目についてのメルマガが来たとき

最初はスルーしていたのですが

中村隼人さんが出ること、初心者向きの演目であることの説明に加えて

webで残り席を見ていたら、花道のすぐ近くが空いていて

値段も¥3,900だったので思い切ってポチッと。

お正月や、8月の納涼歌舞伎に比べたらとてもお手頃!

イヤホンガイドも、通常は¥700の場合が多いのですが

今回は¥450でした。

 

 

 

席は花道の近くだったので

演者さんが通る時の距離の近さに感動。

そして、迫力に圧倒されました。

いつか観たいと思っていた

鳥屋(とや)と揚幕(あげまく)もしっかり見えて大満足。

(↑花道のつきあたりにある小屋と、その入口にある幕)

 

 

 

わかりやすい言葉が割りと多かったような気がします。

弾正が秀太郎や巻絹に言い寄ってフラれるところなどは

イヤホンガイドがなくても面白く観ることが出来ます。

 

 

 

歌舞伎というと敷居が高いと感じてしまう方も多いかと思いますが

こうやって、値段の安いものを観たりして

わかりやすさ・面白さを感じると

「また観に行こう!」と思えるかも。

私も、お芝居を観に行ったり落語を聴くことはあるけれど

歌舞伎、能、狂言には全く興味がなかったので

まさか、こうやって自分でチケットを取るようになるとは

思ってもいませんでした。

 

 

 

作中、粂寺弾正に、腰元の巻絹がお茶を出すシーンがあるのですが

イヤホンガイドで

「これは上林(かんばやし)の初昔(はつむかし)というお茶。

今でも飲むことが出来ます」

と言っていたので、帰り道にググり

上林ではありませんが、一保堂で買いました。

 

 

 

初昔

お茶請けは、虎屋の羊羹

コロンビア産コーヒーで期間限定と書かれていたので購入

おもかげ(黒砂糖の羊羹)のパッケージは夏仕様になっていました

 

 

 

| 観劇・美術・映画 | 18:50 | comments(0) | - | pookmark |
観劇:イキウメ『天の敵』

本日は、東京芸術劇場にて

イキウメ『天の敵』を観劇。

イキウメは、とある方の演劇レビューを読んで

気になっていた劇団です。

 

 

 

この作品は2010年初演の短篇

『図書館的人生 Vol.3 食べもの連鎖〜“食”についての短篇集〜』

を長編化したものだそうです。

 

 

 

 

【キャスト】

橋本 和夫(菜食の料理家)     ・・・ 浜田 信也

寺泊 満(ジャーナリスト)     ・・・ 安井 順平

五味沢 恵(橋本の助手)      ・・・ 小野 ゆり子

寺泊 優子(寺泊の妻)       ・・・ 太田 緑 ロランス

糸魚川 典明(医師。卯太郎の先輩) ・・・ 有川 マコト

糸魚川 弘明(医師。糸魚川の孫)  ・・・ 盛 隆二

糸魚川 佐和子(医師。弘明の妻)  ・・・ 村岡 希美

玉田 欣司(ヤクザ。卯太郎の友人) ・・・ 大窪 人衛

時枝 悟(食の求道者)       ・・・ 森下 創

長谷川 卯太郎(失踪した医師)   ・・・ 松澤 傑

 

 

 

【あらすじ】

ジャーナリストの寺泊は、菜食の人気料理家・橋本和夫に取材を申し込む。

きっかけは、妻の優子だった。

寺泊は難病(ALS)を抱えていることが三ヶ月前に判り

一ヶ月前から橋本の料理教室に通い出した優子は寺泊の為に

橋本が提唱する食餌療法を学んでいた。

当の寺泊は、ラーメンと缶コーヒーを愛する

健康志向とは真逆の人間だが

薬害や健康食品詐欺、疑似科学や偽医療の取材経験も多く興味があった。

優子がのめり込む橋本を調べていくうちに

戦前に食餌療法を低報していた、長谷川卯太郎という医師を知る。

寺泊は、この長谷川と橋本の容姿がよく似ていたことに興味を持ち

ある仮説を立てて取材に臨んだ。

寺泊は、プロフィールに謎の多い橋本は長谷川卯太郎の孫で

菜食のルーツはそこにあると考えたが、

橋本はそれを聞いて否定した。

実は橋本は偽名で、自分は長谷川卯太郎本人だと言う。

本当なら、橋本は122歳になる。

(チラシより)

 

 

 

卯太郎は、戦中に逃げ回っている時、山の中で

食の求道者である、時枝という男に出会い、食べ物を恵んでもらう。

時枝は自分の体を実験台として【単一食】を行っており

栄養摂取によって人々を飢餓や病気から救いたいと考え

【完全食】を求めて独自に研究をしていた。

戦後、帰還した卯太郎は医師となり、時枝との繋がりは途絶えたが

単一食の実験を行っていたために栄養失調となって運ばれてきた時枝と偶然再会する。

そこから、卯太郎は自身の体を使って単一食の研究を始めることにし

なんと、飲血による実験を始めてしまう。

 

 

 

この時すでに50歳を超えていた卯太郎だったが

飲血を始めて数ヶ月経つと、

肌ツヤがよくなり、体力は若いときの様に向上し

周りから怪しまれるほどの若返りを果たす。

普通の生活が困難になり出した卯太郎は、

医師仲間の糸魚川典明にすべてを打ち明ける。

典明は卯太郎の飲血を世間に公表しない代わりに

飲むための血を調達し、体の実験データを取ることにする。

 

 

 

卯太郎には妻が居たが、

夫は若返ったのに自分だけ年老いていくことに耐えられず

彼女も飲血を始めてしまう。

夫婦は【飲血単一食】で、一切食物を口にしない生活をするが

そのためか、子供が出来ず

実際は高齢だが、若い肉体を持て余した妻は夜遊びをし始め、

出会った男に勧められて酒を口にしてしまう。

血液以外のものを口にしたことがきっかけとなり

妻は食べ物を欲するようになるが

「どんなことになるか分からないから、我慢するように」と

卯太郎は説得しようとする。

が、妻は我慢できず、ついに食事をしてしまい、命を落とす。

若返っていた卯太郎は、妻の葬儀に出ることは出来なかった。

 

 

 

やがて、唯一の理解者であった典明も高齢のために他界し

血を求めて、卯太郎は売血してくれる人を探す。

と、「島を荒らした」としてヤクザに目を付けられるが

血を飲む卯太郎を「ヘンな奴」と驚きつつも

仲間として温かく(?)迎えてくれるのだった。

そこで、若い子分の玉田欣司と友達になるが

(実際は60歳くらい年下の友達)

玉田は、ヤクザのいざこざに巻き込まれて死んでしまう。

自分だけが生きて、周りの人が居なくなっていく生活。

 

 

 

その後、典明の孫である弘明の援助により

血を調達してもらっていた卯太郎。

ある日、偶然飲んだ血がとてもおいしい事が気になり

提供者のデータを盗み見てしまう。

それは、菜食主義者の五味沢 恵という若い女性だった。

どうしても恵の血液が欲しかった卯太郎は

「ベジタリアンの友人が、輸血が必要だが

ベジタリアンの人からしか輸血が出来ないので協力してくれないか」

と嘘をついて、恵の血液を手に入れる。

菜食主義の料理研究で有名になりたい恵は

卯太郎の知識や経験を提供してもらうことを条件に

飲血を黙っていると約束し

この事がきっかけで、二人は付き合うようになる。

 

 

 

飲血を始めてから

太陽の光を浴びることが出来なくなってしまった卯太郎だが

恵の血液を飲み出してからしばらくして

太陽光に対する免疫が出来ていることを偶然知る。

これは、野菜が日光を浴びて生長するから

野菜のみを食べているベジタリアンの血液に含まれる

太陽に対する免疫力の影響だと考えた。

今までカーテンを閉め切り暗い中で生活してきた卯太郎は

やっと、人並みの暮らしを送れるようになったと感じたのだった。

そして、恵の身体的負担を減らすために

菜食の料理教室をひらき、ベジタリアンの生徒から

血液を提供してもらうようになる。

 

 

 

実験データ提供のため定期的に訪れていた弘明の病院へ行かなくなって半年。

久しぶりに弘明と佐和子が卯太郎の家へやって来ると

二人は若返っていた。

飲血を始めていたのだった。

信頼できる自分の部下に、飲血を打ち明けたという弘明に対し

「そんな事をしたら、いずれ多くの人が飲血を始めてしまう」と

激昂する卯太郎。

弘明夫妻は太陽光への免疫力がないため

それを利用して夫妻の命を奪って、飲血を終わりにしようとする卯太郎。

「終わったら、鰻を食べるつもりだ。

半世紀以上食べて無いから、どんな味だったか忘れてしまったが…」

と話す卯太郎。

 

 

 

これが今までの自分の経歴だと言う橋本(卯太郎)に

ジャーナリストの満は

「この話、どこまでが本当なんですか?」と尋ね

橋本(卯太郎)は部屋から出て行ってしまう。

と、そこに満の妻・優子が戻ってきて

「子供を迎えに行こう」と声を掛ける。

帰り支度をしようとして、ソファに座り込み

何かを考えているような満を優子が満を抱きしめ

「大丈夫、大丈夫」と声を掛けたところで、終幕。

 

 

 

【感 想】

舞台には、ガラス瓶に入った漢方や調味料などが

棚にびっしりと並べてあって

最初、暗い中でなんだかよく分からなかったのですが

そこは橋本(卯太郎)のアトリエキッチンであることが説明されます。

「3秒クッキング」と題した料理コーナーのテレビ収録を終えた

橋本(卯太郎)のアトリエに満がやってきて取材が開始され

独白のようなスタイルで物語が進むのですが

長方形のテーブルの対角線上に座った橋本(卯太郎)と満の間に

時枝と、若き日の卯太郎が入り込むような形で

過去を再現する見せ方が面白いと感じました。

 

 

 

自分だけが年をとらず

周りから人が居なくなっていく。

怪しまれないように、人と密な関係を築くことを避けて

生きてきた卯太郎。

 

 

 

ラスト、優子が満を抱きしめて「大丈夫、大丈夫」

と言うのですが

この時の優子の表情がよく見えず

双眼鏡を持っていかなかったことを後悔(声はうつろな感じでした)。

おそらく優子は橋本(卯太郎)へ血液を提供していて

満が若返りできれば病気も治り

家族で生活が続けられることに希望を抱いて

満を橋本(卯太郎)に会わせたのだろうと思います。

 

 

 

この台詞の後、なぜか涙が出そうになり

その理由を帰りの電車で考えたのですが

倫理的に考えれば当然、飲血などするべきではないけれど

幼い子供から父親を奪う難病に打ち克って家族で幸せに暮らしたい。

そんな当たり前の感情と、失くしそうな道徳心と

わずかに残っている理性とのはざ間で揺れる人間の心の

なんと愚かで弱いことか。

自分だったら…と考えてしまい、心が重くなりました。

 

 

 

この作品を振り返りながら、クローン羊のことを思い出しました。

話題になりましたよね。

神への冒涜、だとか、人間が生命を創ることへの畏怖。

題名の「天の敵」とは、まさにこういう事ではないのでしょうか。

抗うことで生まれるものもあるけれど

受け入れるしかないもの、抗ってはいけないものの、存在。

恥ずかしくない人生を生きようとすること。

人間として忘れてはいけないものをうまく言葉で表せない時に

「天罰」だとか「お天道様が見ている」と言った言葉が使われるのは

そのためではないのでしょうか。

(そしてお芝居を観ながら

現在放送中のドラマ「フランケンシュタインの恋」や

「リバース」が思い浮かびました)

 

 

 

話としては、とても重いテーマを含んだものでしたが

ところどころに笑いもあり

俳優さん達が素晴らしく

(寺泊を演じた安井順平さんを、なぜか八嶋智人さんのように感じ

優子を演じた太田緑さんを、なぜか板谷由夏さんのように感じました。

声や雰囲気が、似ている気がしました)

観て良かった。

もう一度観たいと思って調べたけれど、チケットは完売。

つくづく(観劇とは “賭け” だなぁ)と思ったのでした。

 

 

 

| 観劇・美術・映画 | 22:02 | comments(0) | - | pookmark |
観劇:劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season花

半年以上前に取ったチケット。

普段は使わないプレイガイド(ローソン)だったため

カレンダー表示を見誤って、月曜日の公演を取得。

(そういえば、月曜日って休演が多いのに珍しいね)

しかも、そのことにしばらく気付かず…

友人に「取れたよ〜!!」

ドヤ顔でチケット取得のスクショを送っていた私。

随分経ってから「ねぇ、月曜日だった…」と謝罪すると

「うん、気付いてたよ」とアッサリ。

結果的には、GWに出勤した友人が代休を取ったので

月曜日で問題なくなり、今年3月に出来たばかりの

IHIステージアラウンド東京へ行ってきました。

(座  席:22列・舞台上手寄り

 上演時間:休憩20分含み、3時間30分)

 

 

 

 

【キャスト】(※カッコ内は、2011年上演時のキャスト)

捨之介   ・・・小栗旬  (小栗旬)

無界屋蘭兵衛・・・山本耕史 (早乙女太一)

天魔王   ・・・成河   (森山未來)

 

極楽太夫  ・・・りょう  (小池栄子)

兵庫    ・・・青木崇高 (勝地涼)

沙霧    ・・・清野菜名 (仲里依紗)

 

狸穴二郎衛門・・・近藤芳正 (千葉哲也)

鴈鉄斎   ・・・古田新太 (高田聖子)

 

三五    ・・・河野まさと(河野まさと)

礒平    ・・・礒野慎吾 (礒野慎吾)

 

 

 

『髑髏城の七人』は、劇団☆新感線における

「いのうえ歌舞伎」と呼ばれる演目シリーズの1つ。

初演は1990年で、1997年、2004年、2011年と

7年ごとに再演を重ね、

IFIステージアラウンド東京のこけらおとし公演として

2017年4月〜2018年まで

「花」「鳥」「風」「月」と4シーズンに分け

シーズンごとにキャストを変えて上演されます。

 

 

 

私は、『髑髏城〜』を舞台で観るのは初めてですが

ゲキ×シネで、2011年上演Ver.を

過去に2回鑑賞(1回目2回目)しています。

友人は、2004年上演時に観劇したそうです。

(そうだ、2011年のチケットが取れたとき

友人が声を掛けてくれたけれど

キャストを見て、なんとなくミーハーな感じがしたので

私は断ってしまっていたことを、6年経って思い出しました。

あの時の私、大バカモノ!!)

 

 

 

「2011年の回は神キャスト」と友人談。

今回初めて舞台を観た私もそう思うくらい、

キャスティングが素晴らしかったと思う。

観ながら、頭の中で比べてしまったけれど

青木崇高さん、りょうさん、あと予想外で清野菜名さんが良かった。

(清野さん、マイク使ってるのにあんなに声張るから枯れてました)

それと、ノーマークというか

友人と「誰?」と言い合った、成河さんという役者さんがとても上手くて

2017年の「Season花」もアリだな、と思いました。

 

 

 

IHIステージアラウンド東京は

客席を360度ぐるりと取り囲んだステージが展開される劇場です。

巨大なお盆の上に載った観客席自身が回転する、新しい形です。

この劇場の製作に密着した番組をチラッと見ましたが

元々は、オランダにこれと同じ劇場があるそうで

オランダからチームを招いて、日本のチームと共同で作業することになったけれど

現地から取り寄せた資材のサイズがぴったりと合わない事が多く

(向こうでは、数ミリ〜数センチの誤差は当たり前なんだそうです。

精巧な技術で仕事をする日本では、考えられないですよね)

組み立てる際にサイズを直しながら作業するので

とても苦労されたということでした。

 

 

 

さて、実際に観た感想(※ストーリー:Wikipedia参照→  )は、と言うと。

これは、ステージの両側に横開きのスクリーンが設置され

場面転換ごとに座席が右もしくは左に移動し

と同時に、スクリーンも開閉して、360度のうち

シーンに合わせて必要な部分のみが開く仕掛けになっています。

 

最初、あれ?そんな狭い幅しか開かないの?と思った。

  (これは、360度に場面ごとのセットが組んであるので仕方ないですね)

座席が動く前の瞬間に、カクン!という前触れがあるのですが

  これが結構気になる。

  (おそらく1,500人前後を収容する劇場なので

   座席が動くのは大仕掛けでしょう。

   これも仕方ないですね)

捨之介が、白い袋に手を入れて動かし、鳩を持っているかのように見せるシーン。

  「それ!」と、鳩(※白い袋)を、かみて(※空)に向けて、

  舞台から見えなくなるように放ると

  袋は見えなくなったけれど、映像として

  鳩が飛んでいくのが、スクリーンに投影される。

  こういったシーンが他にも一箇所ありましたが、

  これは360度劇場を上手く使った演出。とても面白いと感じました。

髑髏城へ、捨之介を助けに

  沙霧、極楽太夫、兵庫、鴈鉄斎、三五、礒平が行くシーン。

  城を上っていくのは、スクリーンに映し出された石垣が下がっていく様子で分かります。

  観客自身が城の上に行っているかのような感覚を味わうこの表現は

  演劇にはなかなか無い手法だと思うので、面白かったです。

動く客席、意外と酔う。

  止まっていても(あれ?いま動いてる?)と思ってしまう(笑)

カーテンコールが素晴らしかった!

  最後に、すべてのセットを少しずつ見せる形で、

  その場面に出てきた役者さんたちが出てくる

 (見入ってしまってたのですが、おそらく座席が回転していたのでしょうね)

  特に、蘭兵衛役の山本耕史さんが左半身しか見せないのは

  格好良かった〜!!

ラストシーン(皆で金を山分けする)の前、

  兵の亡骸を運んでいく二人の前を

  足を引きずりながら歩く兵士は

  天魔王(成河)が死なずに生き残ったことを表しているのが

  今までの、そしてこれから(鳥・風・月)にも

  共通して描かれるのかどうか、気になった。

 (2011年Ver.はどうだったかしら…あぁ、また観たくなった)

 

 

 

総評:新しい観劇体験でした。

   場面転換は観客席を回すだけ(?)なので

   製作側はラクなのかしら、と思ったり。

   カーテンコールで、すべてのセットを見せる方法が

   とても良いと思った。拍手する時間は長くなりましたけど(笑)

   あと、礒平が出てくるシーンで客席が湧くのは

   やっぱりグッとくるよね。

   過去の上演を観ている新感線のファンなんだろうな、と分かるので。

 

 

 

この日の終演後、気になっていた「風」のキャストが

スクリーンにて発表されました。

キャスト自体にはそれほど魅力は感じなかったのですが

元々『髑髏城〜』は1990年の初演〜2004年まで

捨之介と天魔王が一人二役だったのを

2011年版の【ワカドクロ】で、別々の役者を立てる作風に変えた。

それが「風」では松山ケンイチさんが捨之介と天魔王を演じる。

13年ぶりに、一人二役に変える(戻す)というので

ちょっと興味が湧きました。

 

 

 

チケットは高かった(¥13,000)けれど

納得の値段でした。

今回の「花」は、捨之介を小栗旬さんが演じ

「鳥」では、捨之介役が阿部サダヲさんで

天魔王:森山未來さん、蘭兵衛:早乙女太一さん

というキャストなんです。

(2011年上演時の『髑髏城〜』は

森山未來、早乙女太一ともに色気があったなぁ)

「古田新太が出てない新感線なんて」とは友人談。

ということで「鳥」のチケットは取っていませんが

「月」のキャストが発表になったら、また悩みたいと思います。

 

 

 

| 観劇・美術・映画 | 23:50 | comments(0) | - | pookmark |
TSURUBEBANASHI 2017 その

あれ?前回行った のは、3年前だったっけ?

今年、チケットが取れまして行ってきました。鶴瓶噺。

このチケットを取るのに、ちょっと凡ミスがあり

電話予約に挑戦することになったのですが。。。

右手に固定電話。左手にスマホで、リダイヤルしまくり

(チケット予約で電話するのなんて、何年ぶりだったか…

★電話予約あるある言いたい〜:

プルルル、と繋がったのに、ついクセでガチャ切りしがち〜

                  ↑2、3回やったよ)

100回近く掛けて、やっと取れた席は前から10列目。

前の席にはかなり体が大きい方が座っていらしたので

心配でしたが、始まってみると大丈夫でした。

世田谷パブリックシアターは、座席がテレコに組んであるのです。

 

 

 

 

今回は休憩なしの2時間。

(よく覚えているなぁ)と驚くほどの記憶力で

途切れなく話し、終始観客を笑わせていました。

 

 

 

10(水)から始まったこの公演は

今日で4日目。

だいぶ声が枯れていらしたのですが

そのお陰か、タモリさんが登場するお話で

タモリさんのマネがものすごく似ていて

ツボにはまりました。

 

 

 

マネージャーさんや、お弟子さん達の話の後、

NHKの『家族に乾杯』のロケ話。

またオンエア前にネタばらししてたけれど

大丈夫なんだろうか(笑)

 

 

 

3年前の鶴瓶噺でもおっしゃっていたけれど

【ご縁】を大切にされる方なんだな、と

あらためて感じました。

おざなりにしない。

きちんと向き合う。

狙う(=邪心が出る)と、ダメなんだけれど

狙わなくても出てこない時もあるけれど

大切にして向き合うと、奇跡のような出会いがあるそうです。

 

 

 

さんざん、『家族に乾杯』ネタで笑わせてから

そのネタに基づくVTRを見せた後

「 “無意識” の中の “意識” が、人の運命を決めることがある」

ということをおっしゃっていて

それを言った時、(これも誰かの真似?)と思ってしまった。

そう感じるくらい声がぐしゃぐしゃで

よく聞き取れなかったのですが

師匠はこみ上げるものがあったようで、

でも、ぐっと涙をこらえて、観客席に何度も頭を下げて

笑顔で手を振りながら下手にはけて

終演となりました。

 

 

 

あれは、ずるい。

びっくりしてしまった。

「笑わせながらグッとくる事混ぜてきて反則」と友人。

本当だよ。

でも、あれが伝えたいことであり、真髄なのだろうと思う。

きれいごとだと言われようと

邪な気持ちなく、大切にする心が

人と人との繋がりを紡いでいくのだろう、と。

鶴瓶噺2017を聞いて、自分の普段の行いを反省しました。

 

 

 

実は、明日も同じチケットを取っているので

今日との違いがあるかな〜?と探しながら

楽しみたいと思います。

 

 

 

終演後、雨の降る中

難航したカフェ探し。

三軒茶屋って、カフェ難民になるよね…

でも、行ってみたかった星乃珈琲に行けたので満足です!

 

 

 

星乃珈琲

 

 

 

 

| 観劇・美術・映画 | 21:47 | comments(0) | - | pookmark |
赤坂大歌舞伎『夢幻恋双紙〜赤目の転生〜』

チケットを取ろうか迷っていたら

BSで、この作品に密着した番組(番宣)を放送していて

それを見た後すぐに、チケットを取りました。

ちなみに、座席選択は出来ませんでしたが

とても良い席で。。。

 

 

 

【出演者】

太 郎・・・中村 勘九郎

歌  ・・・中村 七之助

剛 太・・・市川 猿弥

静  ・・・中村 鶴松

末 吉・・・中村 いてう

源乃助・・・中村 亀鶴

善次郎・・・片岡 亀蔵

 

 

 

【あらすじ】

 

とある原っぱ。

舞台の真ん中には一本の大きな木が立っていて、周りには長屋が立ち並ぶ。

すべてが切り絵のように見える世界で、子供たちの遊ぶ声が聞こえてくる。

 

 

 

最近この長屋に越してきた、歌。

美しく優しい歌に、近所の子供たちは憧れるが

歌に人気の座を奪われ、面白くない気がしている静(しず)。

静以外の男の子たちが歌の似顔絵を描いてきて

その優劣を争っているところから始まる。

 

 

 

剛太と末吉が、太郎が描いた似顔絵を馬鹿にしていると

右目に眼帯をかけた、歌の兄・源乃助が現れて

絵を見せろと言う。

源乃助に抗えず、太郎が描いた似顔絵を見せる歌。

と、源乃助はこれを捨て、太郎を蹴り上げる。

太郎を助け起こした歌は、兄の無法を詫びて

兄と共にその場を去るのであった。

 

 

 

家で歌を待っていたのは

床に伏せている父・善次郎。

酒を呑んでばかりで働かない兄に代わり、

歌が父の面倒を見ているが、貧しい暮らしで薬も満足に買えず

月日の経つにつれて、善次郎は昼夜の別なく大声をあげるようになり

迷惑に思う隣近所。

だが太郎だけは、成長しても変わることなく歌に接し

自分で用意した食料を歌の家へ届けていた。

 

 

そんな太郎に、次第に心を動かされていった歌は

ある日、太郎を家の中へと招き入れる。

だが、初めて歌の家に入った太郎が目にしたのは

酒をあおる歌の姿であった。

 

 

 

こうした日々を重ねたある日、

数多くの借金を残し、善次郎がこの世を去る。

そこへ現れた源乃助は

歌を気遣う太郎を散々に打ちのめすと、どこかへ去っていく。

乱暴を働く源乃助を止めた歌は、太郎に詫びるのだが

そんな歌に、太郎は「歌ちゃんをひとりにしない」と告げる。

 

 

 

こうして夫婦となった二人だが、

二年経っても、太郎は一向に働こうとせず

歌は女郎屋で雑用をして一家を支える日々。

そして、太郎が、源乃助の後ろ暗い仕事に手を貸していることを知り

絶望する歌。

歌は、太郎の子を妊娠しており

太郎にまっとうになって働いて欲しいと切に願っていたのだが

「あなたとは、この先うまくやっていける気がしない」

と言い残し、雨の中、家を出て行ってしまう。

 

 

 

源乃助の手伝いをしていた太郎は

ある日、死体を埋めるという仕事に怖気づき

この仕事をやめたいと直訴するが

「歌を幸せにできるのか、そのためには金が必要だろう

だったらこの仕事を手伝え」と言う源乃助に

太郎は包丁を持ち出して要求を拒もうとする。

しかし源乃助はそれに構わず

「お前は何をやっても…駄目だ」と言い

刀を抜いて、太郎を手にかけてしまう。

 

 

 

場面は変わり、子供たちが遊ぶ原っぱ。

最近ここへ越してきた歌は、美しく優しくて

子供たちの憧れの存在。

歌に人気の座を奪われ、面白くない気がしている静(しず)。

静以外の男の子たちが歌の似顔絵を描いてきて

その優劣を争っているところから始まる。

静に「太郎ちゃんの絵も見せてよ」と言われた太郎は我に返り

源乃助に殺された後、

子供の頃に戻って生き直していることを悟る。

 

 

 

太郎が描いた似顔絵を見た剛太と末吉は

「太郎ちゃんの絵は上手だ」と褒める。

前回の太郎とは違い、

今回、子供たちは太郎を兄貴分として一目置いている様子。

そこへ右目に眼帯をかけた、歌の兄・源乃助が現れて

皆の絵を見ては馬鹿にする。

太郎は、源乃助に立ち向かって殴りかかり、

源乃助は、立ち去る。

 

 

 

月日は流れ、太郎と歌は夫婦になる。

太郎は手広く商いをして、金持ちになっていたが

亭主関白で、歌が外に出ることをあまり快く思わず

家の中でおとなしくしていることを強要していた。

また、太郎は静と関係をもち、外で逢瀬を重ねていた。

 

 

 

源乃助は、前回とは変わって太郎の小間使いとなり、

善次郎は薬を与えてもらい、元気一杯(笑)

お金はあるが今の生活に窮屈さを覚えている歌に

太郎は「不自由はさせてないだろう」と傲慢な態度をあらためない。

 

 

 

太郎は、私腹を肥やすことに夢中で

幼馴染で、大工になった剛太に安い金額で工事を大量発注する。

我慢の限界を迎えた剛太が発注を断ると

圧力をかけて、剛太のところへ仕事を回さないようにしてしまう。

そのことに腹を立てた剛太は、太郎の屋敷に火を放ち

太郎は、燃え盛る屋敷の中で命を落とすのであった。

 

 

 

場面は変わり、子供たちが遊ぶ原っぱ。

最近ここへ越してきた歌は、美しく優しくて

子供たちの憧れの存在。

歌に人気の座を奪われ、面白くない気がしている静(しず)。

静以外の男の子たちが歌の似顔絵を描いてきて

その優劣を争っているところから始まる。

静に「太郎ちゃんの絵も見せてよ」と言われた太郎は我に返り

剛太による放火で命を落とした後、

再び子供の頃に戻って生き直していることを悟る。

 

 

 

今度の太郎は、明るくて皆の人気者。

歌に想いを寄せてはいるが、

なかなか打ち明けられないでいたところ

剛太も歌のことが好きだと知り、

「協力してやる」と言ってしまう。

太郎の協力もあって、剛太と歌は夫婦となるが

太郎は打ちひしがれて、皆とは会わなくなり

家にとじこもって飲んだくれる日々。

そんな太郎に会いに来た末吉の優しさに感動したが

末吉は自らの博打で借金を抱え、その事を隠して

太郎に金の無心に来たのであった。

そうとわかっていながら、末吉に全財産を渡す太郎。

(確かここで、右目を押さえ、痛がりながら場面転換だった気がします)

 

 

 

ここは歌の家。

床に伏せている善次郎。

そこへ帰ってきた源乃助は、眼帯をしておらず

酒にも手を出さない真面目な人物の様子。

「自分が伏せているせいで、二人に迷惑を掛けて申し訳ない…

自分がこんなだから、お前たちは…」

と謝る善次郎。

源乃助と歌は、この状況をなんとかしたいとお互いを支え合ううちに

兄妹でありながら、恋愛感情をもってしまう。

禁を犯すことはしないと自分を律する源乃助に

想いを抑えられない歌は包丁を持ち出して

源乃助を斬りつけ、右目を怪我させてしまう。

 

 

 

源乃助は(ちょっと、どんな台詞だったのか忘れてしまったのですが…)

「俺のような男ではなく、優しい男に幸せにしてもらえ」

というような台詞を残して、家を出てしまいます。

そして、源乃助がふと我に返ると、着物は同じままで

演者が中村亀鶴さんから、中村勘九郎さんに変わっているのです。

 

 

 

太郎が何度も転生を繰り返したのは

歌を幸せにしたかった源乃助の想いがそうさせたのであり

太郎=源乃助だったのだと

ここで明らかになります。

前世とは異なり、兄妹ではなく出逢ったこの世で

歌を幸せにするために、太郎として。

優しそうに見えて甲斐性の無い太郎は

次に生き直した時は金持ちになりますが、

強欲で人の気持ちを考えられない男。

次に生き直した時は、明るくて皆に好かれ、

周りの人の気持ちを考えて行動できて

そのために、自分の幸せを犠牲にする男。

しかし、どの人生においても

歌を幸せにしたいという想いは共通して存在しています。

それなのに、報われないところが切ない。

 

 

 

ラストシーン、原っぱで子供たちが

歌の似顔絵を見せ合っているところへ現れた源乃助(中村勘九郎)。

舞台は赤く染められていき

原っぱの木と周りの長屋は、影絵のように黒く浮かび上がり

何度瞬きをしても、赤と黒しか無い世界。

太郎の、いや源乃助の右目が見ていた世界はこれだったのかと

観客がわかり始めたところで、終幕。

 

 

 

 

 

密着番組では、太郎の着物について

子供時代と大人時代では、同じ着物を

糸で留めて長さを変えることによって表現していること、

「太郎」という、どこにでも居そうな人間を表現するために

柄も色も奇抜ではないものを選んだこと、

(剛太は黄色、末吉は黄緑をベースにした着物だったと思います)

「赤坂大歌舞伎」とは言うものの

台詞はすべて現代の言葉なので、稽古を始めた頃は

役者さんが戸惑っている様子などが放送されていました。

また、舞台の真ん中にある “木” ですが

紙を二つ折りにしてハサミで切込みを入れてから開くと

左右対称のものが出来上がりますよね。

あれを二つ、90度に組み合わせたような造りだったり

長屋も、実際に組んであるのではなく、

小屋の前面に切り絵を貼ったようにしてあったり

音楽にピアノが使われていたり

(もちろん、立ち回りのシーンでは拍子木も使われています)

一般的な歌舞伎とは全く異なるものとして、存在していました。

 

 

 

一番最初の場面に出てくる子供たち(演じているのは勿論大人ですが)

は、太郎のことを「のび郎(=のび太)」と揶揄していたり

剛太=ジャイアン、末吉=スネオ、静=しずか

と完全に「ドラえもん」のパロディになっていたり

台詞に「やっちまったな〜!!」と、クールポコのギャグが出てきたり

歌に人気の座を奪われて落ち込む静に、末吉が

「だって歌ちゃん、時代は変わるんだよ」と言ったり。

これが転生の度に繰り返されるので、毎回笑いが起こっていました。

 

 

 

作・演出の蓬莱竜太さん、

この方の作品を観たことあったかしら?とググったところ

昨年、パルコ劇場で

「母と惑星について、および自転する女たちの記録」を観ていました。

これ、ブログに感想は書いていませんが、とてもいい作品でした。

 

 

 

決して軽いとは言えないテーマでありながら

随所に笑いどころがあり、

でも観終わった後に、心の中に何かがずっしりと腰を下ろす。

それは、二作品に共通するものだったと感じています。

良席のおかげで、役者さんがすぐ後ろ、横で演じる場面が何度もあり

(すぐ横に立った七之助さんが、美しくて美しくて…)

本当に、行って良かった。

これ、シネマ歌舞伎でやらないかな…

もう一度と言わず、何度も観たい。

瞼を閉じるとあの、深紅と黒の、影絵のようなラストシーンが浮かんできます。

歯をぎりぎりと噛みしめてしまうような、お芝居でした。

 

 

 

 

 

赤坂大歌舞伎_夢幻恋双紙

 

 

赤坂大歌舞伎_夢幻恋双紙

 

 

 

| 観劇・美術・映画 | 21:00 | comments(0) | - | pookmark |
観劇:『不信〜彼女が嘘をつく理由〜』

本日は、東京芸術劇場にて三谷幸喜作・演出の

『不信〜彼女が嘘をつく理由〜』を観劇。

 

 

 

【キャスト】

段田 安則

優香

栗原 英雄

戸田 恵子

 

 

【あらすじ】

段田安則−優香

栗原英雄−戸田恵子

がそれぞれ夫婦役で、この舞台の出演者は4人。

ステージが真ん中にあり、それを挟むように

座席は対面式になっていました。

 

 

<第一幕>

話は、段田夫妻が引っ越してきたところから始まります。

隣に住む栗原夫妻の家に行くと、部屋がものすごく臭い。

(※原因は、25年生きている“オサムシ”という名前のヨークシャテリア)

臭いのを隠し切れず、窓を開けて換気する段田さんに比べ

妻の優香は臭いと感じていないかのような振る舞いをしますが

帰宅したら「あの家臭かったよね?」と夫に話します。

 

 

 

引っ越してきてひと月が経ったころ

優香は、隣家の奥さん(戸田恵子)が

スーパーで万引きしているのを見てしまう。

小麦粉、バター、卵(←この材料で、パサパサのクッキーを作る)

糸こんにゃく、フルーツ、ヨーグルト(←マチェドニアを作る)

を万引きしていたため

優香は夫にこれを話し、隣の旦那さん(栗原)に伝えようと提案します。

段田は「深入りするのはやめよう」と拒否しますが

結局優香に押し切られて、栗原に話すことにします。

段田夫妻から妻の万引きについて聞かされたとき

栗原は「妻がそんな事をするはずがない」と突っぱねますが

後日、段田(※高校教師)の職場に来て

「実は、妻が万引きしていることは知っている。

だが、この事は内緒にしてほしい」

と口止め料として200万円を手渡し、

警察には言わないように頼む。

 

 

 

ある日、栗原夫妻を招いて、段田夫妻宅で食事会をした後

スプーン、スノードーム、イヤリングが盗まれていることに気づいた優香。

栗原が急病になり、妻の戸田も付き添って病院へ行っている隙に

段田と共に栗原夫妻の家へ忍び込み

スノードームを見つけた優香は

我慢の限界を向かえてしまい

段田と共に、警察に話しに行く。

と、そこに現れたのは栗原で、段田夫妻は驚く。

栗原は、警察官だったのだ。

 

 

<第二幕>

栗原は「だから警察には言わないでくれと言ったじゃないか」と言いますが

優香の腹の虫はおさまらない。

何かと理由をつけて栗原夫妻のお宅へ行っては

戸田の盗癖について栗原に進言しますが

栗原は取り合わない。

 

 

 

後日。

戸田から、犬のぬいぐるみをもらった段田夫妻。

だがそれには盗聴器が仕掛けてあり、その事に気づいた二人は

戸田が聞いていることを承知の上で、戸田への文句を言いまくる。

その後、

戸田に呼び出された優香は

自分のことの口止め料として、栗原が段田に200万円渡したこと

段田は、元・教え子の女性と不倫していることなどを暴露します。

 

 

 

盗聴器の一件があり、栗原夫妻とは距離をとるようになった段田夫妻。

だが、ある夜、栗原が庭を掘っているところを見てしまう。

「奥さんを殺して埋めてるんじゃないか?」と優香は疑い

確かめに行こうと、二人で栗原宅へ乗り込む(が、戸田は生きていた)。

 

 

そして、段田夫妻が乗り込んだこの事がきっかけとなり

栗原は自分の中に在る、妻への殺意に気づき

実行してしまう。。。

 

 

 

ラストは、段田と優香が

お互いに隠していることについて相手を問い詰める。

段田は、「きみが隣の奥さんが万引きをするのを見たと言った

あのスーパーは、高級スーパーだと、隣の旦那さんが言っていた。

きみは、なぜあのお店まで行っていたんだい?」と。

優香には不倫相手がおり、その相手の家の近くにあるのが

高級スーパーだったのだ。

だが優香はその質問には答えず

「ねぇ、もらった200万円、何に使ったの?」と。

段田はその質問には答えず

お互いの追求はそこまでで

段田:「おいしいお肉でも食べに行こうか」

優香:「うん!」

という会話で、暗転。

 

 

 

【感想】

まず、席について。

私は、Q列でした。

最初の方で、栗原家へ行った段田夫妻、

段田さんが犬の臭さに息を止めて

窓を開けて空気の入れ替えをしようとするシーンが

何度もありましたが

丁度それを背中側から観るような形になったので

間違いなく面白い顔をしている段田さんが見えなかったのが

とても残念でした。

(段田さんのお顔を確認できる向かい側の席からは

たびたび笑いが起こっていました)

とは言え、さすが段田さん、顔が見えなくても

こちらも思わず笑ってしまうような演技を

背中で見せてくださいました。

 

栗原が急病になり、慌てた戸田が

段田夫妻の家に来たとき、ハーフアップだった

ストレートの髪が少し乱れていた。

その後、心のバランスを崩していくにつれ

少しずつ乱れが大きくなっているように見えて

(あれ?)と思っていたのだけれど

カーテンコールでは綺麗に結い直してあったのを見て

あれは、戸田の心情を表す重要なアイコンだったのかと。

大きな劇場だったら、きっと気付かなかった。

今回のキャパだったから気付けたのは良かったです。

 

サスペンスなのに、笑いどころが沢山あったのは

さすが三谷さん。

優香さんの演技も、とても良かったです。

段田さんと戸田さんは、言わずもがな安定の演技力でした。

 

優香さんの役柄については

目撃したのは自分なのに、それを相手に突きつける時は

夫(段田さん)に前に出てもらい

自分の手は決して汚さない。

自分が悪くならないように、自己防衛をしながら

それでも相手を攻めるその行動は

匿名でコメントをする現代を象徴しているかのようで

SNSみたいな女性だなぁ、と感じました。

 

それと、この作品では

登場人物に名前が無いのです。

夫婦間で「あなた」とか「ねぇ」と呼び

登場人物に、必要以上に感情移入させない

いや、出来ないような意図、というか。

それも、あえてなのかな?と思いました。

加えて、サブタイトルの「彼女」は

一体どちらの女性のことを指していたのかしら。

はたまた…と、

いい意味で、色々後味がわるくて面白かったです。

 

 

 

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