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観劇:イキウメ『天の敵』

本日は、東京芸術劇場にて

イキウメ『天の敵』を観劇。

イキウメは、とある方の演劇レビューを読んで

気になっていた劇団です。

 

 

 

この作品は2010年初演の短篇

『図書館的人生 Vol.3 食べもの連鎖〜“食”についての短篇集〜』

を長編化したものだそうです。

 

 

 

 

【キャスト】

橋本 和夫(菜食の料理家)     ・・・ 浜田 信也

寺泊 満(ジャーナリスト)     ・・・ 安井 順平

五味沢 恵(橋本の助手)      ・・・ 小野 ゆり子

寺泊 優子(寺泊の妻)       ・・・ 太田 緑 ロランス

糸魚川 典明(医師。卯太郎の先輩) ・・・ 有川 マコト

糸魚川 弘明(医師。糸魚川の孫)  ・・・ 盛 隆二

糸魚川 佐和子(医師。弘明の妻)  ・・・ 村岡 希美

玉田 欣司(ヤクザ。卯太郎の友人) ・・・ 大窪 人衛

時枝 悟(食の求道者)       ・・・ 森下 創

長谷川 卯太郎(失踪した医師)   ・・・ 松澤 傑

 

 

 

【あらすじ】

ジャーナリストの寺泊は、菜食の人気料理家・橋本和夫に取材を申し込む。

きっかけは、妻の優子だった。

寺泊は難病(ALS)を抱えていることが三ヶ月前に判り

一ヶ月前から橋本の料理教室に通い出した優子は寺泊の為に

橋本が提唱する食餌療法を学んでいた。

当の寺泊は、ラーメンと缶コーヒーを愛する

健康志向とは真逆の人間だが

薬害や健康食品詐欺、疑似科学や偽医療の取材経験も多く興味があった。

優子がのめり込む橋本を調べていくうちに

戦前に食餌療法を低報していた、長谷川卯太郎という医師を知る。

寺泊は、この長谷川と橋本の容姿がよく似ていたことに興味を持ち

ある仮説を立てて取材に臨んだ。

寺泊は、プロフィールに謎の多い橋本は長谷川卯太郎の孫で

菜食のルーツはそこにあると考えたが、

橋本はそれを聞いて否定した。

実は橋本は偽名で、自分は長谷川卯太郎本人だと言う。

本当なら、橋本は122歳になる。

(チラシより)

 

 

 

卯太郎は、戦中に逃げ回っている時、山の中で

食の求道者である、時枝という男に出会い、食べ物を恵んでもらう。

時枝は自分の体を実験台として【単一食】を行っており

栄養摂取によって人々を飢餓や病気から救いたいと考え

【完全食】を求めて独自に研究をしていた。

戦後、帰還した卯太郎は医師となり、時枝との繋がりは途絶えたが

単一食の実験を行っていたために栄養失調となって運ばれてきた時枝と偶然再会する。

そこから、卯太郎は自身の体を使って単一食の研究を始めることにし

なんと、飲血による実験を始めてしまう。

 

 

 

この時すでに50歳を超えていた卯太郎だったが

飲血を始めて数ヶ月経つと、

肌ツヤがよくなり、体力は若いときの様に向上し

周りから怪しまれるほどの若返りを果たす。

普通の生活が困難になり出した卯太郎は、

医師仲間の糸魚川典明にすべてを打ち明ける。

典明は卯太郎の飲血を世間に公表しない代わりに

飲むための血を調達し、体の実験データを取ることにする。

 

 

 

卯太郎には妻が居たが、

夫は若返ったのに自分だけ年老いていくことに耐えられず

彼女も飲血を始めてしまう。

夫婦は【飲血単一食】で、一切食物を口にしない生活をするが

そのためか、子供が出来ず

実際は高齢だが、若い肉体を持て余した妻は夜遊びをし始め、

出会った男に勧められて酒を口にしてしまう。

血液以外のものを口にしたことがきっかけとなり

妻は食べ物を欲するようになるが

「どんなことになるか分からないから、我慢するように」と

卯太郎は説得しようとする。

が、妻は我慢できず、ついに食事をしてしまい、命を落とす。

若返っていた卯太郎は、妻の葬儀に出ることは出来なかった。

 

 

 

やがて、唯一の理解者であった典明も高齢のために他界し

血を求めて、卯太郎は売血してくれる人を探す。

と、「島を荒らした」としてヤクザに目を付けられるが

血を飲む卯太郎を「ヘンな奴」と驚きつつも

仲間として温かく(?)迎えてくれるのだった。

そこで、若い子分の玉田欣司と友達になるが

(実際は60歳くらい年下の友達)

玉田は、ヤクザのいざこざに巻き込まれて死んでしまう。

自分だけが生きて、周りの人が居なくなっていく生活。

 

 

 

その後、典明の孫である弘明の援助により

血を調達してもらっていた卯太郎。

ある日、偶然飲んだ血がとてもおいしい事が気になり

提供者のデータを盗み見てしまう。

それは、菜食主義者の五味沢 恵という若い女性だった。

どうしても恵の血液が欲しかった卯太郎は

「ベジタリアンの友人が、輸血が必要だが

ベジタリアンの人からしか輸血が出来ないので協力してくれないか」

と嘘をついて、恵の血液を手に入れる。

菜食主義の料理研究で有名になりたい恵は

卯太郎の知識や経験を提供してもらうことを条件に

飲血を黙っていると約束し

この事がきっかけで、二人は付き合うようになる。

 

 

 

飲血を始めてから

太陽の光を浴びることが出来なくなってしまった卯太郎だが

恵の血液を飲み出してからしばらくして

太陽光に対する免疫が出来ていることを偶然知る。

これは、野菜が日光を浴びて生長するから

野菜のみを食べているベジタリアンの血液に含まれる

太陽に対する免疫力の影響だと考えた。

今までカーテンを閉め切り暗い中で生活してきた卯太郎は

やっと、人並みの暮らしを送れるようになったと感じたのだった。

そして、恵の身体的負担を減らすために

菜食の料理教室をひらき、ベジタリアンの生徒から

血液を提供してもらうようになる。

 

 

 

実験データ提供のため定期的に訪れていた弘明の病院へ行かなくなって半年。

久しぶりに弘明と佐和子が卯太郎の家へやって来ると

二人は若返っていた。

飲血を始めていたのだった。

信頼できる自分の部下に、飲血を打ち明けたという弘明に対し

「そんな事をしたら、いずれ多くの人が飲血を始めてしまう」と

激昂する卯太郎。

弘明夫妻は太陽光への免疫力がないため

それを利用して夫妻の命を奪って、飲血を終わりにしようとする卯太郎。

「終わったら、鰻を食べるつもりだ。

半世紀以上食べて無いから、どんな味だったか忘れてしまったが…」

と話す卯太郎。

 

 

 

これが今までの自分の経歴だと言う橋本(卯太郎)に

ジャーナリストの満は

「この話、どこまでが本当なんですか?」と尋ね

橋本(卯太郎)は部屋から出て行ってしまう。

と、そこに満の妻・優子が戻ってきて

「子供を迎えに行こう」と声を掛ける。

帰り支度をしようとして、ソファに座り込み

何かを考えているような満を優子が満を抱きしめ

「大丈夫、大丈夫」と声を掛けたところで、終幕。

 

 

 

【感 想】

舞台には、ガラス瓶に入った漢方や調味料などが

棚にびっしりと並べてあって

最初、暗い中でなんだかよく分からなかったのですが

そこは橋本(卯太郎)のアトリエキッチンであることが説明されます。

「3秒クッキング」と題した料理コーナーのテレビ収録を終えた

橋本(卯太郎)のアトリエに満がやってきて取材が開始され

独白のようなスタイルで物語が進むのですが

長方形のテーブルの対角線上に座った橋本(卯太郎)と満の間に

時枝と、若き日の卯太郎が入り込むような形で

過去を再現する見せ方が面白いと感じました。

 

 

 

自分だけが年をとらず

周りから人が居なくなっていく。

怪しまれないように、人と密な関係を築くことを避けて

生きてきた卯太郎。

 

 

 

ラスト、優子が満を抱きしめて「大丈夫、大丈夫」

と言うのですが

この時の優子の表情がよく見えず

双眼鏡を持っていかなかったことを後悔(声はうつろな感じでした)。

おそらく優子は橋本(卯太郎)へ血液を提供していて

満が若返りできれば病気も治り

家族で生活が続けられることに希望を抱いて

満を橋本(卯太郎)に会わせたのだろうと思います。

 

 

 

この台詞の後、なぜか涙が出そうになり

その理由を帰りの電車で考えたのですが

倫理的に考えれば当然、飲血などするべきではないけれど

幼い子供から父親を奪う難病に打ち克って家族で幸せに暮らしたい。

そんな当たり前の感情と、失くしそうな道徳心と

わずかに残っている理性とのはざ間で揺れる人間の心の

なんと愚かで弱いことか。

自分だったら…と考えてしまい、心が重くなりました。

 

 

 

この作品を振り返りながら、クローン羊のことを思い出しました。

話題になりましたよね。

神への冒涜、だとか、人間が生命を創ることへの畏怖。

題名の「天の敵」とは、まさにこういう事ではないのでしょうか。

抗うことで生まれるものもあるけれど

受け入れるしかないもの、抗ってはいけないものの、存在。

恥ずかしくない人生を生きようとすること。

人間として忘れてはいけないものをうまく言葉で表せない時に

「天罰」だとか「お天道様が見ている」と言った言葉が使われるのは

そのためではないのでしょうか。

(そしてお芝居を観ながら

現在放送中のドラマ「フランケンシュタインの恋」や

「リバース」が思い浮かびました)

 

 

 

話としては、とても重いテーマを含んだものでしたが

ところどころに笑いもあり

俳優さん達が素晴らしく

(寺泊を演じた安井順平さんを、なぜか八嶋智人さんのように感じ

優子を演じた太田緑さんを、なぜか板谷由夏さんのように感じました。

声や雰囲気が、似ている気がしました)

観て良かった。

もう一度観たいと思って調べたけれど、チケットは完売。

つくづく(観劇とは “賭け” だなぁ)と思ったのでした。

 

 

 

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